02 実写撮影&アニメーション
完全分業制のLa Postaチームは総勢30名規模に達した
実写撮影は8月21日と22日に渋谷で行われた。本作の撮影監督はベイエリアをベースに活動するマイケル・エリクソン氏が担当(本作のルックに海外の作品ぽさを感じるのは、エリクソン氏とLa Postaによるところが大きいだろう)。Frame.ioを介してリアルタイムで撮影手法やカメラワーク、撮影したプレートを必要に応じてLa Postaに確認してもらいながら撮影を進めたそうだ。なおCG・VFXワーク用の撮影環境のデータ収集については、Theta SでHDRI素材を撮影、一般的なクロムボールなど、ひと通りぬかりなく採取していたようだ。
実写撮影に先立つ7月末に、ゼロシーセブンにより、藤原氏のスケーティングのモーションキャプチャ収録が行われた。システムはMVNを採用し、藤原氏にはMVNスーツを着てもらった状態でスケーティングや特設サイト用に必要な動きを演じてもらったという。滑走、止まってポーズ、ジャンプ、トリックなど30以上のモーションを収録。また、キャプチャ終了後は、先述したレスパスビジョンによるフォトグラメトリーが行われた。
8月末にオフライン編集が終わり、9・10月の2ヶ月にわたってCG・VFXワークが行われた。本作のCG・VFXワークはアルゼンチンのLa Postaが一手に引き受けた。同社の創立者であり、本プロジェクトではVFXプロデューサーを務めたパブロ・トゥファロ氏へのメールインタビューによると、トゥファロ氏を筆頭に、モデラー、シェーダ・アーティスト、リガー、クロスシミュレーション・アーティスト、アニメーター5名、マッチムーブ・アーティスト2名、ライティング・アーティスト2名、レンダリング・エンジニア2名、コンポジター4名、プロデューサー2名、CGヘッド(スーパーバイザー)、そしてカラリストという、24名が参加したという。La Postaが完全分業制を敷いていることもあるが、クライマックスのコズミックズームバックから渋谷 109ビル前でタイムラプスするカットについては、イチからエンバイロンメントを制作する必要があったため、4名の専任チームが別途稼働したそうだ。今回が初の日本案件になったそうだが、日本との時差マイナス12時間という環境は、La Postaチームが実作業を進める間に監督たち日本のチームは眠り、逆にLa Postaチームが就寝中に日本チームが一連のレビューを済ませるという、非常に効率的な分業が行えたとのこと(多少のリップサービスは含まれているだろう)。
実写撮影の様子。中央が監督を務めたSpikey氏、その話し相手が撮影監督を務めたマイケル・エリクソン氏
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ムラサキパーク(東京都足立区)におけるモーションキャプチャ収録の様子。MVNはセンサーシステムから無線でデータをPCに取得するしくみだが、今回はセンサーシステムから受信機までの通信距離が100メートルに達したため、いくつかのトリックを決めながらパークを1周するような動作も一連のながれで収録された
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収録後には実写撮影のテストとして、特殊造形と衣装を着用してのスケーティングも行われた
MVN Animate Proによるモーションデータの調整例。今回は腰固定でモーションを収録するシナリオが採用されている。広範囲に動くアクターの動きを現場で細かく確認することができたという
特設サイト用のキャラクターアニメーションのテストとして、3頭身に置き換えたもの
自由廊から提供された頭部と、レスパスビジョンから提供された胴体を組み合わせたデジタルダブル(La Postaにて調整)。日本から提供されたキャラクターモデルのポリゴンを整理するためにリトポロジーからスタート。全てのポリゴンを四角にしつつ、細かな調整が施された
La Postaが作成したキャラクターリグ&セットアップ。La Postaが独自に開発したリグツールとのこと。クロスシミュレーションについては、当初はMarvelous Designerの導入も検討したそうだが、スケジュール等の諸条件を考慮した結果、最終的にシンプルなポイントベースのクロスシミュレーションを利用。動きが速いこともあり、十分なクオリティが得られたそうだが、どうしてもめり込みは発生するため、不具合のある箇所はシェイプデフォーマで対応したという
キャラクターアニメーション作業の例
キャラクターアニメーション #160|セイコー"WW"『ストリートは誰のもの?』
シェーディング表示(実写素材に合成)#160|セイコー"WW"『ストリートは誰のもの?』