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映画『信長協奏曲』(VFX制作:IMAGICAほか)

映画『信長協奏曲』(VFX制作:IMAGICAほか)

<2>マットペイントで作り上げた安土城

ミニチュアを使ったマット制作

信長の居城として登場する安土城は、古文書などの文書でしかその存在が残されていないため、どのような外観であったか様々な説があり、どのような安土城のデザインにするかは制作者にとって悩みの種でもあり、醍醐味でもある。過去幾度か安土城は制作されているが、CGによる安土城の再現ではどこか違和感が出てしまうという監督の要望から、本作では安土城の天守閣部分は、現存するミニチュアをレタッチして新たな安土城のイメージを制作している。

「松山監督からはかなり早い段階からCGで天守閣を作って無理矢理空撮で見せたりするのではなく、普通に撮影したら天守閣が映っているという感じにしたい。変に天守閣を強調するのはやめよう。見せるというよりは素直に収まっている感じにしたい、という考えを伺っていました」と西尾氏は話す。ミニチュアというベースとなる素材があるわけだが、実際には本作の世界観に合わせるため、様々な加工が必要になったという。基本的な外観は土台の部分に本隊が撮影した姫路城の実写素材を使用し、そこにミニチュアの安土城をレタッチした素材を合成して構成されている。映画内では天守閣にはベランダが備え付けられているのだが、ベランダ部分は3DCGで作成し合成されている。

「主人公のサブローだったらこんな安土城を作ったのではないか」という解釈でレタッチが進められたのだという。「歴史的な建物の場合、古びた感じにすることでリアリティを得ることができるものがほとんどなのですが、本作の安土城は設定上新築ということで、とてもきらびやかで汚れがあまりないためアトラクションの建物に見えてしまい、素材感のさじ加減が難しかったですね」と西尾氏は語る。

▲<1>ガイドイメージを基に撮影されたミニチュアの写真素材。ライティングなどもきちんとガイドに合わせて当てられている

▲<2>ミニチュアの写真から不要な部分を削除したレタッチのベースとなるプレート

▲<3>細かい質感などをレタッチして世界観を合わせていく

▲<4>3DCGでベランダ素材を作成し合成

▲<5>安土城のベースとなる姫路城の実写プレート

▲<6>実写プレートを変形してパースを合わせ、カラコレしたプレート

▲<7>人物などは別撮りして配置されている

▲<8>完成した安土城外観のショット

別ショットの安土城

▲<1>レタッチを施した安土城のプレート

▲<2>彦根城の撮影プレートを使った外壁部分

▲<3>カメラワークは、NUKEに3Dとしてプレートを配置してコンポジットしている

▲<4>完成ショット。旗は基本的に撮影した素材を使っているが、ショットによってはCGで作成した旗を使っているという

<3>マットペイントによる世界観づくり

夜景の制作

右に掲載した夜の安土城のショットも監督のこだわりが感じられるショットだ。このショットはスカイラインと呼ばれる太陽が完全に落ちる寸前の時間帯に撮影された実写プレートに、灯がともった安土城の全景が合成されている。まず明るい状態の綺麗なマットペイントを作成した後、明るさを調整しながら実写プレートにコンポジットしている。「明るさなどのルック的な詰めで非常に時間がかかったカットです。実景1枚のショットなのですが19テイクくらい作成しています。マットペイントが完成するまで1ヶ月ぐらいかかりました」と赤羽氏は話す。

▲<1>スチールロケ用に作成されたラフレイアウト

▲<2>スカイラインねらいで撮影された実写プレート

▲<3>灯入れ用のマット画素材

▲<4>Photoshopで作成されたマットペイント

▲<5>カラコレによって夜に調整された完成ショット

マットペイントで窓外を作成

本作では安土城の天守閣から外の景色が見えるショットも多い。これらも全てマットペイントで制作されている。マットペイントを作成するにあたって、安土城の高さや周囲の見え方を実感するために実際に城があった安土山に登り、距離感を確かめたという。スタッフがきちんと地理的なスケールの感覚を掴むことで、マットペイントの作業がスムーズとなり、効率良く作業を進めることができるのだ。

安土城に作られたバルコニー風のベランダから琵琶湖が見えるショットの例。

▲<1>実写プレート

▲<2>スチールロケで撮影された風景を基に作成されたマットペイント

▲<3>合成用マスク素材

▲<4>マットペイントと実写プレートが合成された完成ショット

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<4>合戦シーンのVFX

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