>   >  VFXアナトミー:骨・筋肉・毛をリアルに再現した存在感のある妖猫&3DCGセット&エフェクトによる幻術、映画『空海 -KU-KAI- 美しき王妃の謎』
骨・筋肉・毛をリアルに再現した存在感のある妖猫&3DCGセット&エフェクトによる幻術、映画『空海 -KU-KAI- 美しき王妃の謎』

骨・筋肉・毛をリアルに再現した存在感のある妖猫&3DCGセット&エフェクトによる幻術、映画『空海 -KU-KAI- 美しき王妃の謎』

02 妖猫のキャラクターVFX

地道なリサーチと正攻法で着実にクオリティを高める

本作VFXの要となった、妖猫のキャラクター表現。猫のモデル制作では、AVATTAによる生身の猫のフォトグラメトリーが用いられた。その動きについては、中国の 原題が「妖猫でん(ようびょうでん)」と知り、当初は化けたり、妖術を駆使するキャラクターになることも想定したそうだが、監督が求めたのはあくまでも造形、質感、動きなど、全ての要素において「本当に生きているかのような、猫としての自然な描写」であった。そうした意向を受け、「3D Cat Anatomy Software」という猫の解剖学的な情報がまとめられた市販の3Dデータをリファレンスとして、骨、筋肉等の形状を正確にモデリングした。同様に、実際の猫に則したかたちでリギング。「バグが発生する可能性を最小限に抑えようと、サードパーティ製のプラグインはあえて用いずにMayaの標準機能だけでリギングしています」(山崎 崇リギングアーティスト)。後半シーンでは、ある人物の胸ぐらを掴むといった人間の感情が前面に出た演技もする妖猫だが、アニメーション作業では猫の骨格では不可能なポーズや姿勢にならない範囲で、説得力のある動きを追求。「その意味では、動き以上にポーズが重要になったと思います」(秋田雄介アニメーションリード)。

筋肉表現について。青山氏のチームとしては、Muscleシミュレーションを本格的に導入した初めてのプロジェクトになったそうだが、リギングと同じく着実にクオリティを高められるというねらいから標準のMayaマッスルを使用。「妖猫についてはマッスルの影響を強くしすぎるとかえって不自然に見えてしまったので控えめに調整しました」(山崎氏)。毛並みもしっかりと描かれている。「猫の毛の本数を調べたところ、全身に約100万本生えていることがわかりました。そこで、XGenを使い、実際に100万ほど生成しています」とは、テクニカルアーティストを務めた黒木厚典氏。「メッシュが重なると毛が飛び散ってしまう不具合が生じたりと、細かな調整が求められましたが、Delta Mushデフォーマを活用することで対応しました」(山崎氏)。このように、実在感のある妖猫を創り出す上ではリアルな猫の毛の表現が不可欠だったことから、レンダラにはArnoldを採用。「Hair表現に定評があったので試したところ、実際に良いクオリティを出すことができました。レンダラとシェーダの設計が効率的なおかげで、ノイズを抑えることができました。また、Maya 2017からXGen Interactiveが実装されたことにも助けられました」(黒木氏)。

妖猫の完成モデル。体格、毛の長さや本数といった実際の猫に関する豊富なデータ(黒木TAが中心となり収集)を基にリアルな造形に仕上げられた

妖猫のボディリグとセットアップ。実際の猫が行うことのできる動きを再現できるように組まれた。「特に猫は体が伸びるので、そうした伸びも表現できるようにセットアップしました」とは、リギング アーティストの山崎 崇氏

妖猫のフェイシャルリグとセットアップ。よく使用する表情はブレンドシェイプで用意しつつ、細かなリグも組み込むことで複雑な表情にも対応できるようになっている


インハウスツール「RigSelector」のUI。「コントローラを直接選択しなくても、このツールから選択していました」(秋田氏)


アニメーション作業のながれを図示したもの



  • レイアウト工程。この段階のムービーを使ってオフライン編集を行うため、編集点を決めるのに必要なアニメーションが施されている



  • アニメーション工程。キャラクターとしての感情が込められた動き、表情を高めていく



  • 監督へのアニメーションチェック。Furを表示してハードウェアレンダリングで出力することで、最終的な仕上がりがイメージできるように配慮



  • 最終レンダリングイメージ


妖猫のセカンダリアニメーション&シミュレーション作業のながれを図示したもの



  • Muscleシミュレーションを施す。筋肉の動きを確認し、動きが速すぎて伸びてしまっている場合は該当パラメータを調整



  • メッシュをチェック。シミュレーションによるパカつきや不自然に相関している箇所がないかを確認し、問題があればメッシュのスカルプトを行う



  • Hairシミュレーションをチェック。毛の動きを確認し、不自然な相関が目立つ個所や毛のながれがおかしなところをブラシツールで調整(Delta Mushデフォーマを活用)



  • オクルージョンパスによる毛の最終確認。毛の飛び散りが発生している場合は、該当する毛をスカルプトで修正するかコンポジット作業でレタッチ


完成ショットのブレイクダウン例



  • Houdiniで作成した煙素材のレイヤ-



  • 煙レイヤーに飛ぶ花びらや木の枝を合成



  • 実写プレートを合成



  • 画面奥のマットペイントを合成



  • 実写プレート中の桜に対してCGで作成した桜の花や枝を追加



  • 妖猫を合成し、一連のコンポジット処理を施した完成形

極楽の宴シーンにて、幻術によって出現する虎の完成モデル。妖猫と同様に詳細な資料とデータが集められた。「よこはま動物園ズーラシアさんが所蔵する虎の毛皮を撮影したりもしています」(黒木TA)


虎の筋肉シミュレーション



  • 骨モデル。このモデルを用いて骨のシミュレーションを行なっている



  • 毛の制御用カーブ


筋肉モデル。このモデルに対してMuscleシミュレーションを施す

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03 撮影現場の3DCGセット化&エフェクトワーク

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