<2>ショットワーク~昼シーン~
UE4で構築された3Dシーンを活用
本作には、現実のスクランブル交差点周辺を忠実に再現した昼シーン、近未来SF的なビジュアルの夜シーン、そして『荒野行動』とのタイアップを象徴する荒野シーンという3種類のシーンが描かれる。前述した通り、ベースとなるスクランブル交差点周辺の3Dシーンは、DRLサービス向けに制作されたものだ。DRLは街角や観光スポットなど、実在の場所を完全な360度CGで再現したデータを利用者の要望に合わせて加工・編集し提供するサービスであり、今後は銀座や歌舞伎町などの都内の名所を中心とした全国のロケーションのほか、架空の世界など創造性のあるロケーションも提供していく予定だという。DRL向けの3Dシーンは、映像コンテンツ用途だけでなく、VR等のインタラクティブコンテンツ用途にも対応できるようにUnreal Engine 4(以下、UE4)でシーンが構築されているのが特徴だ。そのため、本作向けにUE4からフルHDサイズでレンダリングする際も1フレーム1秒程度で済んだというから驚きである。
ベースとなったDRL向けUE4シーンの制作から、本作のショットワークまでをリードしたのはVMTの熊本スタジオである。熊本スタジオは現在、10年以上のプリレンダーのCG制作経験を有する山野幸一郎氏と長塚 創氏、そして生まれ育った熊本でCG制作に携われるとVMTの門を叩いた業界1年目の髙田海羽琉氏と上山雅樹氏という4名で構成されているとのこと。「昨年6月からDRL用のUE4シーンの制作を進めていたところ、10月に本プロジェクトに並行して取り組むことになりました。まずはUE4からのデータ出力方法の確立から着手したのですが、髙田と上山が積極的に様々な検証を行なってくれました」(長塚氏)。スクランブル交差点のUE4シーンは、QFRONT側の約180度のエリアを対象に、奥行きについては手前から道路が見た目として続く領域は3Dベースで作成されているとのこと。「本作向けの調整としては、許可が下りなかった看板等の作り替え、樹木の追加。建物のガラス面については、槇野さんに現地の様子を撮影してもらった写真をリファレンスに作成しました。3ds MaxなどのDCCツールでは当たり前に行える操作が、UE4ではひと工夫しないとできなかったりと、不慣れなこともありましたが、良い経験を得ることができました」(山野氏)。今回は、PFTrackからトラッキングデータを直接UE4に読み込むことができなかったため3ds Max経由でインポートしたりしたそうだが、ノウハウが蓄積されていけば今後はより効率的に制作できることだろう。
交差点周辺のUE4シーン
本作の背景制作でベースとなった「NEXT G」第1弾プロジェクト「デジタル・リアリティ・ロケーション」用の渋谷駅スクランブル交差点周辺のUE4シーン
▲SHIBUYA 109側
▲QFRONT側。見た目で道路が奥へと続くエリアは3Dベースで作成されている
トラッキング作業のながれ
3ds Maxによる作業例
▲有機的な形状のプロップ制作。Reality Captureを使用した
▲現実の渋谷の街を計測し、点群データ(Point Cloud)を作成
▲点群データをビルの正確な位置情報として使用
UE4によるルックデヴとライティング作業
昼シーンのコンポジット
▲Flameによるフィニッシング作業が施された完成形