<3>バーチャル空間の画づくり
デジタル特有の"美"を追究した近未来的エフェクト
近未来的なバーチャル空間のエフェクトはiwaburi氏が担当。ビルが生成されていくエフェクトは、主人公がデジタルアーティストということでバケットレンダリングをモチーフにした。制作はHoudiniで、レンダリングはC4DにてOctaneRenderで行われた。Houdiniでは、ビルのジオメトリのノーマル方向にボクセルを拡大してからポイントを生成することで、ビルよりもひと回り大きいキューブを作成。そこにVEXpressionでランダムにノイズをかけ、階段状の変化を加えて上がるように制御し、ビルが形づくられていくエフェクトに仕上げている。色は段階的に赤、青、緑と変化を付け、黄色い枠はBlenderのバケットレンダリグの色をモチーフにしている。ビル街に輝くホログラムもHoudiniによるもの。ロゴは2Dデータから3Dデータをつくり、HoudiniからAlembicでC4Dにインポートした後、OctaneRenderのScatterでレンダリングした。デジタルサイネージは広告らしいストーリー性のあるものがBlenderで制作され、こちらも手慣れたCyclesでレンダリング。主人公の履いている靴のCMが流れるという細かい仕掛けも施されている。
クライマックスで主人公が落下して溶け込むエフェクトは、ビルのエフェクトと同様のものをベースに、スピード感を出すためにボクセルを縦に伸ばして舞わせ、モーションブラー的な表現に仕上げた。「エフェクトは初めてのチャレンジでしたが、形になったので良かったですし、成長できたと思います。反省点としては、最終的にカットをバトンタッチすることになってしまったので、もっとスキルアップしたいです」(iwaburi氏)。
バーチャル空間の最終的なルックは、nagafujiriku氏がその前のカットに合わせるように仕上げた。OctaneRenderのフォグボリュームを使って奥行き感のあるいい雰囲気を出している。ビルはキットバッシュで制作し、手前のビルの室内はインテリアマッピングを使用した。主人公の服のシミュレーションは、衣装デザインと同様にNakamura氏が担当。120fpsのハイスピードで計算したものを変換して本編で使った。また、3種類の硬さの服を使うことで、風圧による服の動きが再現された。
シミュレーション
PV中盤、下から上にオレンジ色のワイヤーフレームが描かれ、次々とビルが建っていくピクセルエフェクトのカットは、Houdiniのシミュレーションを活用
▲VEXpressionを記述して時間経過と共に上方向にブロックが積み上がるようにした
▲シミュレーションの途中(96フレーム中25フレーム目)
▲カラー用に1棟ずつ書き出されたビルのオブジェクト
ロゴの制作
ビル群に浮かび上がる企業ロゴや製品ロゴなどはHoudiniでホログラム的なルックに仕上げた
▲Houdiniでの作業
▲ルック調整の変遷。グローの強さ、色味などを細かく調整した
▲完成したロゴを読み込んだCinema 4Dシーン
▲主人公がダイブ(DIVE)する直前に見えるビル群のレイアウトをC4Dで確認・調整
ビル群のルック調整
▲PV後半のクライマックス、主人公がダイブ(DIVE)する直前に見えるビル群のルック調整の変遷。青みがかった空気感と強めのグローに落ち着いた
シミュレーション
PVのラスト、ダイブしながら主人公がボクセルエフェクトと共に消えていくカットはHoudiniのシミュレーションによる
▲VEXpressionを活用し、Point Wrangleによりポイントを飛散させている
▲各ポイントをボクセルにして寿命により消失するように設定