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映画『天空の蜂』(VFX制作:エヌ・デザイン)

映画『天空の蜂』(VFX制作:エヌ・デザイン)

<3>背景アセット制作

フル3DCGで作られた新陽

原子力発電所の新陽は完全に架空の発電所であるため、外観のほとんどが3DCGによる背景アセットが使われている。このアセットは、ロケが行われた横須賀市のゴミ処理場の建物をベースにつくられた。当初ゴミ処理場の実写をベースに原子炉部分だけを合成する予定だったが、カメラワークの都合から原発周辺の背景全体をモデリングすることになったという。背景アセットの制作は基荘一郎氏が担当している。

「発電所の建物は、実際のゴミ処理場の図面をもらってモデリングすることで、完全に実寸でつくられています。はじめの頃は資料がほとんどなく、Google Earthで距離を測りながら憶測でモデリングしていました。そこからのつくり直しは大変でしたね。敷地内には樹木や標識といった細かいアセットも多いので、物量をこなすのが非常に大変でした。後半で1名に手伝ってもらいましたが、それでも3ヶ月かかっています」と基氏は言う。
大量にある樹木は、そのままではレンダリングが回らなくなってしまったため、最終的にはV-Rayプロキシに置き換えてレンダリングされている。

「フル3DCGでつくってしまうとどうしても生活感が出ないので、生活感のある背景になるようにオーダーさせてもらいました。クルマの駐車の仕方だったり、パイロンなどが雑多な配置になっていたり。カメラが引いているショットではつくり込まなくてもよかったのですが、ある程度カメラが寄ってしまうようなショット用に3度目のつくり直しをしてもらいました」と阪上氏は語る。

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▲<1> 撮影された横須賀のゴミ処理場のリファレンス写真

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▲<2> 初期に作られた新陽の全景モデル

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▲<3> 新陽のモデルをレンダリングしたもの

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▲<4> レンダリングに使われたIBL素材

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▲<5> 新陽のモデル確認用の実写プレート

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▲<6> フル3DCGで作成された新陽の全体をレンダリングしたもの

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▲<7> 図のように確認用の実写プレートと新陽のCGを重ね合わせて違和感がないか確認している

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▲<8> 選択されている樹木の部分は、レンダリングコストがかかるため、プロキシ化されている

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▲<9> 樹木をプロキシ化した状態

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▲<10> 樹木のメッシュ表示

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▲<11> 実際にレンダリングすると図のような樹木としてレンダリングされる

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▲<12> かなりカメラを寄せた状態の新陽の原子炉部分のモデル

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▲<13> 原子炉部分のレンダリング素材

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▲<14> ゴミ処理場を撮影した実写プレート

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▲<15> 完成ショット

背景アセットはその他に、格納庫などが作成された。格納庫内はセットが組まれていたので、FAROで3Dスキャンを行いモデルを作成している。

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▲<1> FAROのデータを基に作成された格納庫内部のモデル

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▲<2> 格納庫の外装もモデリングしたもの

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▲<3> ショットに合成したもの

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