<5>NUKEを活用したコンポジットワーク
本格的にNUKEを導入した初のプロジェクト
エヌ・デザインではこれまでコンポジットツールにはAfter Effects(以下、AE)が使われていたが、本作から本格的にNUKEによるコンポジットワークフローが採用された。タイトルワークにAEが一部使われているが、実写パートに関しては完全にNUKEが使用されている。2年くらい前に仮導入した経験があるが、1作品を丸ごとNUKEだけでコンポジットしたのは本作が初めてだそうだ。
本格導入するにあたり、コンポジットディレクターの阿美伸一氏は昨年の9月から2ヶ月の間、NUKEの勉強だけをするという期間を設けてもらい、社内でNUKEセミナーを行なってコンポジットチーム全体にNUKEのノウハウを共有していったという。この2ヶ月間を集中してNUKEの習熟にあてることで、ほぼストレスなく実戦投入することができたとのこと。「NUKEを使っていなかったら、この期間でこのクオリティでは完成していなかったと思います。ノードベースなので効率的であると同時にできる幅も広く、実写向きのワークフローが組めました」と阿美氏は話す。
これまではboujouでトラッキングしたものをMayaで3Dマットを作成し、AEで合成するというツールを渡り歩かないといけないワークフローだったが、NUKEは3Dコンポジットの機能が強いので、NUKEだけでこれらの機能を実現することができ、非常に作業効率が良いのだという。3DCGの素材は基本的にOpenEXRが使用され、実写プレートはプリグレーディングされたDPXによって運用されている。「コンポジットで難しかったのはビッグBをいかに馴染ませるかというところです。ノーマルチャンネルを使ってリライティングするなど、ライティングはかなり加工しています。あと雲や気流のショットでは、3DCGで作成してもらったエフェクトにNUKEのパーティクルで作成した煙を混ぜるということなどもしています」と阿美氏は言う。
窓ガラスはめ込みの制作例
NUKEの3D空間にオブジェクトを配置し、実際に環境を映り込ませて作成している。
▲<1> 元画像
▲<2> CameraTrackerで3Dトラッキングを行い、ポイントクラウドを基に窓の位置にcardを配置
▲<3> 映り込み用画像
▲<4> <3>を環境の球体に割り当てる
▲<5> <3>~<4>を実際に反射させ映り込みを作成
▲<6> ガラスの汚れ素材なども作成
▲<7> 背景には写真を基にパースマップで立体に起こしたものを使用
▲<8> 3DCGで作成されたエンジンなどを足した完成ショット
蝉の動きをNUKEで付けている例。▲<1> 死んだ蝉を木に貼って撮影した実写プレート
▲<2> 実写プレートをNUKEでトラッキング
▲<3> 蝉だけを除去
▲<4> Model Builderで蝉の胴体を作成しProject3Dでマッピング
▲<5> 左右の羽根も同様に作成する
▲<6> マスクを使って3Dモデルに起こした蝉の必要部分だけを抽出
▲<7> モーションブラーやグレインの調整を行う
▲<8> 完成ショット。映像ではカメラがパンをしている。羽の動きは簡易ツールを作成しエクスプレッションで制御可能だ
TEXT_大河原 浩一(ビットプランクス)
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