<5>モニターグラフィックスの制作
現代劇では欠かせないデバイス画面を作る
最近の現代劇では、スマートフォンなどの携帯デバイスが小道具として使われることが非常に多い。本作でもSNSを使って事件の拡散するシーンやGPSを使った位置検知など、多くのシーンで携帯デバイスを利用した演出が登場する。これらの携帯デバイスのインターフェイスは、多くの作品のデバイス画面を制作している目崎利幸氏によって作成された。「これまでの映画作品では、何も映っていない携帯デバイスを使って撮影を行い、ポストプロセスで画面を合成するということが多かったのですが、最近では実際に操作できるアプリを作ってもらったり、撮影現場で実際にモニタの映像を表示して撮影していることが多くなっています」と道木氏は語る。
「実際にある携帯アプリなどを撮影に使ってしまうと、権利やタイアップの問題があります。また実際のものを使ったとしても余分な情報が映り込んでしまい、ポスプロで消すなどの加工が必要になってしまいます。そこで今回は全てオリジナルのデザインで動くものを作りました」と目崎氏。使用されている携帯の画面は目崎氏がデザインしたもので、Flashを使ってオーサリングされているため、役者が実際に操作して動かすことができるようになっている。
このようなモニタグラフィックスは昔は美術や装飾部が担当する要素だったが、デバイスに表示される内容が複雑になってきているため、美術部では対応できないことが多く、最近ではVFXの範疇に入る作業として扱われているのだという。「この分野は非常に需要が多く、デバイスに映像が表示されるような内容がある場合は早めにチェックして制作をお願いしています。そうすることでポスプロでの作業が少なくなることで、結果的にコストダウンにつながることも多いので」と道木氏は話す。
架空のSNSアプリの画面。
▲<1><左><中><右>のように撮った写真がSNSに投稿される様子が役者の演技に合わせてアニメーションされる
▲<2>実際にショットの中で使われたシーンの完成ショット
TVに流れる天気予報の画面。演出に合わせて細かく天気が設定され表示されている。▲<1>全国の天気図
▲<2>関東地方の天気図
▲<3>実際に使用されているシーンの完成ショット
GPS発信器で相手の居場所を探知するアプリの広域画面。
▲<左>携帯電話のメニュー画面▲<右>メニュー画面の中のターゲットの位置を表示するメニューボタンをタップすると、画面がスライドして広域地図が表示されるというアプリの動作がFlashアニメーションで作成されている
▲<左>広域地図の表示に切り替わった画面▲<右>ターゲットの位置が表示された画面。これらの画面が操作する芝居に合わせて切り替わっていく
パソコン用GPS探査ツールの画面。
▲<1>広域地図表示の画面。位置情報など細かいデータがアニメーションする
▲<2>拡大地図表示の画面。ターゲットの動きなどもアニメーションが付けられている
▲<3>実際に使用されたシーンの完成ショット
GPS発信器で相手の居場所を探知するアプリの拡大画面。
▲<1><左><中><右>役者の移動に合わせて地図がスクロールしていくアニメーションが作成されている
▲<2>画面の下部には、ターゲットの現在地が北緯と東経で表示され、移動に応じて変化するターゲットまでの距離もアニメーションで変化していく
TEXT_大河原 浩一(ビットプランクス)
PHOTO_弘田 充
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映画『グラスホッパー』
11月7日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督:瀧本智行/脚本:青島武/原作:伊坂幸太郎「グラスホッパー」(角川文庫)/VFXスーパーバイザー:道木伸隆/出演:生田斗真、浅野忠信、山田涼介ほか/配給:KADOKAWA、松竹
©2015「グラスホッパー」製作委員会 grasshopper-movie.jp
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