02 モデリング&アニメーション
日本ではまだ目新しいツールを積極的に活用する
アーティスト3人の3DCGモデル制作は、AVATTAから提供されたモデルをブラッシュアップするかたちで高金氏が完成させた。「LDHさんは、CGやVFXを積極的に採り入れたコンテンツを数多く制作されているので、クオリティにはとてもシビアなクライアントさんです。ですが、今回はファーストチェックのときから、造形のリアリティについては満足していただけました。アーティスト本人の写真データをベースにするフォトグラメトリーの大きな利点だと思います」(東監督)。また、Khakiでは、少数精鋭の制作スタイルに適しているという判断から、従来より3DCGワークについてはCINEMA 4D(以下、C4D)とGPUレンダラのOctane Renderをメインツールとしている。一方、アーティストの3DCG表現は3ds Maxで仕上げられたことから、レンダラはGPUレンダラのRedShiftを採用することに。RedShiftも今回が初導入だったそうだが、期待通りのパフォーマンスを発揮したという。
ベースとなるアニメーション&カメラワークについては、東監督自身がMayaで作成している。カメラワーク、そしてカット編集についてはMaya 2017から実装された[Time Editor]が活用された。「今回、Time Editorを初めて利用したのですが、使いやすかったですね。ダブルアクションや、ストレッチなども手軽に作成できたので、とても柔軟に作業が行えました。現実では不可能なカメラワークが表現できるのは3DCGの利点ですが、やりすぎるとリアリティを損なってしまうので、実写で撮っているようにも見せつつ、ベストなバランスを探しました」(東監督)。
棺型のカプセルに関しては、先述のとおり東監督が描いたラフスケッチを叩き台としてModelingCafeの山家氏がデザインコンセプトを作成。全8案の中から、十字架のようなデザインを採用。そこからBarehand Modeling Studioの一瀬氏がZBrushによるスカルプトを皮切りに、アーティストモデルとの整合性、神々しさのデザイン的なニュアンスとして、穴を開けたりチューブを加えるなど細かい部分に配慮し、生物感、有機的な印象を出したデザインに仕上げられていった。東監督いわく、「有機的なメカデザイン」を得意とするアーティストは限られているそうだが、山家氏&一瀬氏は期待に応えてくれたという。「SFのメカをしっかりデザインできる人、理解している人に担当してもらえてとても良かった」と、東監督。カプセルの開閉ギミックは、ダミー等で動きが付けられた。またテクスチャリングにはSubstance Painterが用いられたが、V-Ray用のセッティングでエクスポートされていたため、Khaki側でRedShift用へのコンバート&調整を行なったという。
顔周りにクローズアップした画像
DJ DARUMAのモデル作成では、顔周りのデザインについてひときわ試行錯誤が重ねられた
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初期モデル。ゴーグルや側頭部に機械パーツを施す代わりに口元は生身のアーティストを忠実に再現するという路線であった
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ゴーグルを外した代わりに、口元に機械パーツを配するという方針に転換。眼球も人工的なデザインに改められた
髪の毛はフォトグラメトリーでは作成できないため、3ds MaxプラグインのOrnatrixが用いられた
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OrnatrixのOx Edit Guideモディファイアのブラシを使い、ベースとなるヘアスタイルを調整
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FrizzやCurling、Clustering等のモディファイヤを追加し、最終調整を施した状態。「生成するポリゴンに対してOrnatrixのModifierを重ねてヘアをつくり上げていきました。今回初めてOrnatrixを使ったのですが、ブラシ類が優秀でスタイリングも手早く簡単に行えました」(高金氏)。まず、ブラシ類である程度までヘアスタイルを作り、Frizz等のモディファイヤを追加しながら毛束感や縮れ具合を調整していったという(lengthマップやdistributionマップも併用)。ちなみに、まつ毛も同じ要領で作成したそうだ
山家氏が描いたデザインコンセプト。A~Hの8案が描かれたが、上図Gの方向でモデル制作が進められることになった
一瀬氏が作成した棺型カプセルの完成モデル。メカ形状に対して有機的なデザインが巧みに施されている
東監督からの修正指示の例。「今回初めて東監督とご一緒させていただいたのですが、とてもやりやすかったですね。いつもポジティブでアーティストのモチベーションを引き出すのがとても上手な方だと思います」(一瀬氏)
田崎氏が作成した「ChamberZ」背景シーン。C4Dで作成し、Octane Renderでレンダリング。メカ機構の回転ギミックは当初予定されていなかったものだが、東監督からのリクエストを受け、田崎氏が背景モデルのデザインを独自に解釈して動きを創り出した
VERBALのレンダリング設定。先述のとおり、アーティストについては3ds Maxで作成し、RedShiftでレンダリングされた(HDRIはC4Dから書き出したものを使用)。肌の質感はRedshift MaterialのSub-Surface Multiple Scatteringを使用。髪の毛はRedshift Hairマテリアルを使い、少しだけ髪色にランダムカラーを適用して自然な感じに調整している。また、被写界深度もRedShift上で設定された
ブレイクダウン
Khaki/ 赤澤希望氏が担当した、UIグラフィックスの作業例
MoGraph上のUI素材(メッシュ表示)