03 宇宙&ブリッジシーン
限られた時間の中でこそ丁寧な画づくりを
冒頭の宇宙シーンの制作は、デジデリックが手がけている。「デジデリックの大山(俊輔)さんとは様々な宇宙表現をつくってきていますが、ボリュームのある宇宙はどうしても制作コストが高くなってしまうのでこれまでは避けてきました。ですが、今回は真っ向勝負しています!」と、東監督。基本的には実写素材は使用せず、フルCGで作成。本作の宇宙シーンは、前半がワイヤーフレーム的な表現を組み合わせたデジタル調、そこから色彩豊かな星雲が織り成すカラフルな宇宙空間へとシームレスに移行する。「まずは、カラフルな宇宙から着手しました。星雲の表現にはFumeFXを用いたのですが、デジタル宇宙用のワイヤーフレームの星雲は、Particle FlowでFumeFXのvelocityを再現したものを、3ds MaxプラグインのAtomで加工するという手順で作成しました」(大山氏)。Atomを利用すると、After Effects(以下、AE)プラグインのPlexus的なラインアートを効率良く作成できるという。レンダラは、V-Rayを採用。宇宙シーンは約30秒で構成されているが、シーン自体は丸1日かければレンダリングが終わる程度に設定できたとのこと。その連番データに対して、AE上でテクスチャでマッピングしたラインを追加するなど、画の密度を高める工夫が施された。
宇宙シーンとメインとなるChamberZ内部シーンのブリッジとなるパートは、Khakiの平井美潮氏が担当。10秒弱のシーンだが、先述した映像コンセプトの象徴として、ホログラム的なルックに仕上げられた約20名のLDH所属アーティストたちのヘッドショットが通り過ぎていくというインパクトのある表現に仕上がっている。「アーティストさんを360°撮影した写真素材を使い、フォトグラメトリーで3Dモデル化しました。それをC4Dに読み込んでカメラを設定し、アニメーション。フレネルなど、けっこうな数のレンダーパスを書き出して、AEで仕上げました。AE上ではTrapcode Formでドット処理の表現を施し、さらにいくつかの素材を合成しています」(平井氏)。フォトグラメトリー作業には、RealityCaptureを使用。こちらも初使用だったというが、精度の高い3Dモデルを作成できたとのこと。
最後に、Khakiの田崎陽太VFXディレクターに本プロジェクトをふり返ってもらった。「ここまで全面的に登場するフォトリアルなキャラクター表現というのは、Khakiにとっても初めてだったのですが、新たなツールを積極的に採用することで無事に完成させることができました。今回得たノウハウを生かして、さらに新しいことをやっていければと思っています。その意味ではUnreal Engine 4にチャレンジしてみたいですね」。
遠景用のマットペイント、W7,680×H3,840ピクセルで描かれた
星雲の3DCGワークを図示したもの
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FumeFXで生成した星雲
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左の画像で計算したものから、都合が良いフレームを抽出し、Particle FlowでFumeFXのvelocityを再現。最終的には表示よりも数量を減らしたものをデジタル調の宇宙で使用している
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右上の画像で作成した星雲(Particle Flowで再現したもの)を、3ds MaxプラグインAtomを使い、デジタル調に加工。「デジタル調からカラフルな宇宙へとシームレスに移り変わるという演出を考慮し、データ面の整合性からもFumeFX→Atomというワークフローを採用しました」(大山氏)
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レイアウト。カメラワークならびに各オブジェクトのアニメーションに対しての空間的な立体感、抜けていく爽快さを念頭にトライ&エラーが重ねられた
デジタル宇宙のコンポジット素材構成
カメラが通り抜ける空間に配される各種星雲の素材
デジデリック側でのコンポジット完成形。このデータに対して、東監督によってカラコレ等の最終調整が施される
カラフル宇宙のコンポジット素材構成
RealityCapture(www.capturingreality.com)によるフォトグラメトリー作業の例
完成した3Dモデル(テクスチャなし)
ブレイクダウン
アーティストの3Dモデルにホログラム加工を施した素材
Khaki側でのコンポジット完成形