>   >  VFXアナトミー:3DCGの悪霊・虚<ホロウ>と実写アクションの巧みな融合、映画『BLEACH』VFXメイキング
3DCGの悪霊・虚<ホロウ>と実写アクションの巧みな融合、映画『BLEACH』VFXメイキング

3DCGの悪霊・虚<ホロウ>と実写アクションの巧みな融合、映画『BLEACH』VFXメイキング

02 リギング&アニメーション

触手のように動くグランドフィッシャーの体毛

セットアップは、2016年10月から開始。まずグランドフィッシャーの毛の表現のR&Dから着手したという。「Maya 2016を使用し、Maya Hair、XGen、Yetiという3つのツールを1ヶ月ほどかけて検証しました。カーブは同じものを使い、ジェネレーションをそれぞれ試したのですがシミュレーション自体は全部同じでも揺れる結果が異なってきました。また、最初は約1万本で試したところ、データ負荷が重過ぎてしまい揺らすだけで精一杯に(苦笑)。トライ&エラーも困難な域に達してしまったので、最終的に約4,800本までリダクションしました」と、森田健介キャラクターリギング&シミュレーションSV。一連の検証結果をふまえ、Maya Hairは毛の本数を増やすためには、カーブも増やす必要があったためデータ負荷的に却下。XGenは、一定のクオリティに達したが仕様が独特であり、Maya 2016上でのパフォーマンスも重く感じたため、本プロジェクトではYetiを採用。任意の箇所に容易に毛を追加できることに加え、制御のしやすさも決め手になったという。

グランドフィッシャーのリギング&セットアップでは、毛束が触手のように動く表現にも悩まされたそうだ。こちらについては、デフォーマベースから検証をはじめ、ノイズ、シミュレーション、ストレッチ、セルフコリジョンなどが段階的に加えられた。また、触手の表現は、何かを掴んだり、叩いたりするとき意図したところに触手の形状がくる必要があるため、ピン留めの要領で先端部分と根元を任意のポジションで止められるようにセットアップが施された。「そのため、根元はYeti、掴むところはMaya Hairでセットアップしています」(森田氏)。アニメーション作業用のローモデル、本番用のハイモデル、さらに中間のモデルを用意。用途に応じて使い分けることで、複雑な表現を可能にしているとのこと。

アニメーションについては、グランドフィッシャーとフィッシュボーンは、モーションキャプチャがベース。多足のヘキサポダスについては、手付けベースで動きが付けられた。「アニメーション作業は、全てMotionBuilderで行いました。そのため、ヘキサポダス向けにキーフレームアニメーション用のリグを作成してもらいました」(矢舩貴之アニメーションリード)。アニメーターは平均して15名体制。グランドフィッシャーの触手表現など、難易度の高い動きが求められるショットが多数あったため、クランチタイムでは20名体制に達したそうだ。

フィッシュボーンの手まわりのセットアップ例。「作品内で手元がアップになるカットが多かったため、関節の形状、筋の隆起を、補助骨とターゲットを用いてより自然に見えるようにセットアップしました」(神田 遼氏)


擬似筋肉表現の例。筋肉のながれに合わせた伸縮する補助骨が仕込まれた


フィッシュボーンのデザイン的な特徴のひとつに腰みのが挙げられる。腰みのの動きはシミュレーションではなく、足の動きをドライバにしたターゲットを用意することで自然な動きに仕上げている




ヘキサポダスの脚部セットアップ例。多関節の脚をアニメーションさせるために、複数のIKを組み合わせた専用リグを作成。この専用リグ向けにIK/FK切り替えツール「IKFKManager」が自社開発された。このツールを使えば、IKで付けたアニメーションの位置を保持したままFKコントローラへの切り替えが可能になるという(その逆も可能)




死神(代行)たちが携える斬魄刀(ざんぱくとう)によって切断される表現については、2体読み込んで対応された(フィッシュボーンも同様)


グランドフィッシャーのセットアップ



  • MotionBuilder用セットアップ(4足)



  • 同2足(立ちポーズ)用セットアップ


nHairを用いて筋肉の揺れを表現。図ではCurveをジグル的なかたちでHairシミュレーションを施している


グランドフィッシャーの毛並みの表現


nHair(curve)でシミュレーション。シミュレーション用カーブは約4,800本に達した


シミュレーション後、Mayaのビューポート上でYeti(グランドフィッシャー本体)とMaya Hair(触手)を表示させた例


最終レンダリングイメージ


モーションキャプチャ収録の例(フィッシュボーン戦)



  • フィッシュボーンの収録(フロント)



  • フィッシュボーンに握られている朽木ルキア(杉咲 花)のデジタルダブル用の収録(フロント)。DFの収録スタジオ「OPAKIS」には、リアルタイムで簡易モデルによるプレビューが可能なシステムが構築されている


MotionBuilderによるアニメーションのブラッシュアップ



グランドフィッシャーの毛束が触手のように動く表現の作業手順をまとめた仕様書より。DF内で初めてYetiを導入した案件であったため、他チームとの情報共有の目的でデータ構造やライセンス関連の仕様が文書化された。「触手はパターン分けの種類も多く、4段階でシミュレーションが行える仕様にしていたため、こうしたドキュメントが必須でした」(森田氏)



触手の動きにノイズ感を出すために、デフォーマとエクスプレッションを用いてセットアップ。図は担当アーティストが使用するアトリビュートを説明したもの


触手の伸び縮み表現の例。黒崎一護(福士蒼汰)の妹たち、夏梨(安藤美優)と遊子(平澤宏々路)を掴む触手が、先端を止めた状態でのうごめく様を検証した画像


路線バスを掴むために、先端を止めているカットより


背景も含めて3DCG主体で描かれるグランドフィッシャー戦はプリビズが作成された


プリビズの例。余談だが、プリプロの段階では原作漫画のデザインに近いモデルが用意された


本番のアニメーション作業例

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03 3D主体の背景セット&ショットワーク

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