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"攻めの姿勢"で躍動感あふれる群衆表現を実現、映画『燃えよ剣』

"攻めの姿勢"で躍動感あふれる群衆表現を実現、映画『燃えよ剣』

03 五稜郭の戦いシーン

画づくりに専念できるワークフローを構築

クライマックスの舞台、「五稜郭の戦い」シーンは、物量としても作業負荷としても難易度の高いカットが多くなった。撮影現場に集められるエキストラは最大でも約150名のため、ロングショットでは相当な数のCG兵士を足すこととなったという。さらに躍動感を高める上では、馬に乗った兵士のアニメーションや爆破エフェクトも求められた。馬のモデルはコラットのアーカイブ素材をベースに本作に合わせてリファイン、馬の動きにも細かな手が加えられた。また、砲撃の着弾による爆破表現では、CG兵士を使い爆風で吹き飛ぶ動きを加えたりもしているので、ぜひ劇場で確かめてもらいたい。

制作進行とデータ管理にはShotgunを活用。ショットのスタート/エンドや、各ショットごとのカメラ(フレームサイズ)の管理といった仕様については、できるだけアーティストの手を煩わせないように細かくタグ付けを行い、シーンを開けば自動的に反映されるように整理された。コラットのレンダーサーバは8台で構成(いずれもAMD Ryzen Threadripper搭載マシン)されているが、夜間等は未使用の作業マシンもレンダリングに利用することで対応したという。「3DCGのレンダリング時間は、重いシーンでも1フレーム20~30分でした。3DCGよりもNUKEによるコンポジット作業の方が重くなりました。これは3DCGで画づくりを詰めるのではなく、コンポジット工程で細かな調整に対応できるようにしたためです」と、のざわ氏。コラットのチームは、ピーク時で20名規模に達したそうだが、オダ氏の豊かなネットワークを活用することでマスク切りはナイス・デーの海外拠点(グループ企業)の協力を仰ぐなど、コラットしか対応できない難易度の高い作業に注力することができたそうだ。「劇中でも重要なシーンのVFXを、3DCG作業だけでなく最終的なコンポジットまで社内でやりきれたことが大きな自信につながりました。今後もより良い画づくりを実践していきたいです」と、コラットの山元太陽CGIプロデューサー。そして、オダ氏は次のように総括した。「原田監督が描く日本の三大変革期・最終章のVFXを、コラットをはじめとするチーム総出で全てを出しきるつもりで取り組みました。みんなががんばってくれたことで、とても良い作品に仕上がったと思います。映像クオリティも海外に引けを取らないと自負しているので、ワールドワイドに展開していければと願っています」。

細かな仕草を表現するためのAdobe Mixamoを活用

リターゲット例(その1)。MotionBuilderでキャラクタライズすることで、Mixamoで作成したモーションをリターゲットできるようになる

リターゲット例(その2)

いくつかのモーションをブレンドし、身を伏せていたキャラが走り出すといった、オダ氏のリクエストに応える複雑なモーションへと仕上げていく

Houdiniによる砲撃の着弾(爆破)エフェクト作業例



  • lineをEmitterとして、爆発の方向と距離をセットアップ



  • (ノードツリー・上部)【画像左】を利用して爆発のVelocityとVolumeサイズをコントロール、(ノードツリー・下部)レンダリングはMantrだけでなく、MayaによるV-Rayでも行えるようにOpenVDBデータを出力する


五稜郭シーンのマスターショット向けGolaem作業例。このカットではTerrainは使わず、見た目でスケール等を使って群集が実写の背景に馴染むよう調整


マスターショットのブレイクダウン



  • 実写プレート



  • マットペイントを合成



  • 兵士モブの影素材を合成



  • Houdiniで作成した破壊エフェクトを合成



  • 兵士モブを合成



  • 一連のコンポジット処理が施された完成形


五稜郭シーンの中でも群衆の数が多いショット



  • モブキャラのバラツキを調整したり、ポーズが同じキャラを近くに配置しないようにすることでリアルな動きが追求された



  • 足元に生える草のマスク出力用Mayaレイヤー。「実写プレートの草の生え具合に合わせて草のCGモデルを置き、マスクをレンダリングしています」(のざわ氏)



  • 実写プレート



  • 一連のコンポジット処理が施された完成形


斜面のロケ地に対するGolaemシミュレーション例。「手前を走る兵士にはTerrainを適用して地面の高さを背景に合わせています。丘の向こうからくる兵士たちは接地が見えないのでrotateで角度を調整して登ってきているように仕上げました。倒れるタイミングや位置を1体ずつ細かく調整しているので、かなり強引な方法だとは思うのですが、1体ずつキャッシュを出して、それぞれのノードでコントロールすることでGolaemのノードエディタがノードで埋まってしまうことを回避しました」(江本氏)。表示が軽いため、複数のキャラを本来のMayaデータで読み込むよりも位置やアニメーションのタイミング調整を容易に行えたそうだ


NUKEによるコンポジット作業例



  • Shotgunからショットの情報を取得するノード



  • ShotInfoノードからエクスプレッションで、自動でフレームオフセットや各種設定を行う(上から放射上に伸びている、明るいグリーンの線がエクスプレッション)

各素材でLUT情報が異なるため、コンポ途中のリニアのノードを、簡単にLUT適用後の色で確認できるようにViwerProcessをそれぞれ用意して、選択できるようにされた(sRGB変換では最終の色味での確認ができないため)。図・左が合成フロー途中のリニア状態のView、図・右が同じノードにViewerProcessでLUT適用後のプレビュー(Linear→Log→LUT)。図・上部の"None"、"MKO_AlexaOP1B"がViewerProcessの種類

海外のプロダクションに委託したロト素材。煙や草なども細かく分けられている


丘陵ショットのブレイクダウン



  • 実写プレート



  • 最奧の兵士モブを合成



  • 中景(下手)に兵士を追加



  • 下手に煙エフェクトを合成

手前(下手)に兵士を追加した完成形



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