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YP監督とUNDEFINEDが同世代のアーティストと共に手がけたGorilla Attack『隔世 gorilla』MV

YP監督とUNDEFINEDが同世代のアーティストと共に手がけたGorilla Attack『隔世 gorilla』MV

<3>画のインパクトを高めるエフェクトやコンポジット

ボリューメトリックのデータに手描きエフェクトを加筆

ヒガシローランドとニシローランドによるダンスシークエンスは、ボリューメトリックキャプチャならではの演出を盛り込んだインパクトのある仕上がりになっている。「ダンスの見せ場となるシークエンスなので、単調にならないよう、実写ならありえない縦横無尽なカメラワークで構成しました。さらにSOLANINEさんが描いたGorilla Attackのアーティスト写真からインスピレーションを得て、手描きのエフェクトを加筆することでアクセントを加えています。エフェクトの作画は初めてでしたが、思った以上の効果が出せて自分でも驚きました」(MIZUNO氏)。iPadアプリのProcreateを使い、VFXのロトスコープの要領で、1フレームずつ人物の輪郭をトレースしたという。

▲【左上】実写では不可能な床下からのアングルまで撮影できる点は、ボリューメトリックキャプチャのメリットのひとつだ/【右上】iPadアプリのProcreateで1フレームずつ人物の輪郭をトレースし、ラインエフェクトを加筆している/【下】完成画像


▲AE上で【左】レンダリング画像の【右】色味を調整


▲【左】背景と輪郭線を追加/【右】さらにカートゥーンエフェクトを追加


▲【左】先のiPadアプリで描いたラインを合成/【右】ラインにグローを追加


▲【左】画面全体に紙のテクスチャを合成/【右】カラーグレーディングを行なって完成


ヒガシローランドが渋谷の街で踊るシークエンスの撮影は納期3日前に行われた。実写パートはビル群やネオンなどの要素があるものの、CGパートと比べるとおとなしい印象だったため、急遽エフェクトを追加することになった。「実写パートとCGパートの差をなくすことは、本作の課題のひとつでした。そのままつなぐとビジュアルに差が生じてしまうため、CGパートのポイントクラウドのテイストを実写パートにも加え、違和感を抑えることにしました」(MIZUNO氏)。

▲AE上で【左】深夜の渋谷にて撮影された実写素材の【右】色味を調整


▲【左】デジタルノイズのようなエフェクトを追加/【右】画面全体にも細かなノイズを加える


▲カラーグレーディングを行なって完成。後述するCGパートのポイントクラウドのテイストを実写パートにも加えることで、実写とCGの世界観に差が生じないように調整している


iwaburi氏がライティングとコンポジットを担当した導入シークエンスは、地面と蛍光灯だけでシーンを構成しなければならず、YP監督と何度もイメージの共有を図りながら作業が進められた。「蛍光灯の配置とフォグで空間に奥行き感をもたせつつ、コントラストの強い重厚感のあるビジュアルを目指しました。Blenderでフォグを作成すると処理負荷が高くなるので、AEでフォグを作成し、グロー、レンズのディストーション、ダストなどを加えて仕上げました。楽曲のリズムに合わせて明滅する蛍光灯をキーフレームで管理すると複雑になってしまうため、楽曲のフレーム数を基にコントロールしました」(iwaburi氏)。本シークエンスのボリューメトリックキャプチャ時には、収録可能範囲から出たニシローランドが撮影データから消える様子を目にしたYP監督が、それをフレームアウトの演出として取り入れることを発案。iwaburi氏がエッジ部分にエフェクトを加えることで実現させた。

▲AE上で【左】レンダリング画像に【右】フォグを追加


▲【左】グローを追加/【右】カラーグレーディングを行う


▲レンズのディストーションやダストを追加して完成。このショットでは、ニシローランドがボリューメトリックキャプチャの収録可能範囲から出ていく様子を、フレームアウトの演出として取り入れている


▲BlenderのDriverを使用し、楽曲のフレーム数を取得。この値を基に、楽曲に同期して蛍光灯が明滅するアニメーションを作成している


地下鉄のシークエンスのライティングとコンポジットはnagafuji氏が担当。「奥行きを感じるライティングを意識しつつ、暗転の前後でライティングの変化を強調しています。フォトリアルでありながらドラマティックなムードを演出するため、補色のカラースキームを意識したライティングやカラーグレーディングを施しました」(nagafuji氏)。

▲C4Dの作業画面。地下鉄の車両は、市販データをC4Dで加工して作成された。暗転後は全体を通してライトの動きが激しくなるため、低精度の設定で何度もレンダリングし、アニメーションと楽曲の同期をくり返し確認したという


▲AEの作業画面。フォグやブルームの強調、スモークの合成、モーションブラーなどを適用している。オレンジと緑で構成された補色のカラースキームが印象的だ。レンダラはOctaneRenderを使用。本作の制作に合わせてNVIDIAのGeForce RTX 2080 Tiを2枚搭載したPCを導入したこともあり、1フレームあたりのレンダリング時間は3~4分程度に抑えることができたという


▲レンダリングの各成分。上段左から、beauty、diffuse、reflection。中段左から、emission、remainder、volume。下段左から、post、depth、cryptopass


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<4>渋谷の街に出現するGorillaと、その結晶化

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