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映画『DEATH NOTE Light up the NEW world』(リードVFX制作:デジタル・フロンティア)

映画『DEATH NOTE Light up the NEW world』(リードVFX制作:デジタル・フロンティア)

02 キャラクターアニメーション&フェイシャル

キャストたちの迫真の演技と互角にわたりあえるフルCGの死神たち

フェイシャルキャプチャならびにフェイシャルアニメーションは、石山健作SVをはじめとする6名のチームが担当。そして全体的なアニメーション制作は、亀川武志SVをはじめとする5名が担当したという。リュークのフェイシャルアニメーションを付ける際は、柔らかな生命を感じられる動きを追求したという。「あまり見えませんし、そもそもキャプチャすることができないため従来は省略されることが多かったのですが、本作では首周りの動きにもこだわりました。首筋や喉ぼとけの動きをしっかりと付けるといった具合に、よりいっそうのリアリティを求めていきました」(石山氏)。首から上はフェイシャルのチームによってリグからアニメーションまで一括して担当。表情と首の筋肉は繋がっているので、リグのチームと担当を切り離すことで、よりスムーズにクオリティを上げられたとのこと。フェイシャルアニメーションのチェックに関しても極力軽くレンダリングを行い、最終形に極力近いクオリティでチェック。レンダリングしないとディテールまで確認できないため、確実にクオリティの底上げになったという。ただし、その代償としてレンダリングコストが急増してしまった。ハイディテールのCGキャラクター表現においては不可避のため、悩ましい課題だと思う。「本作の死神たちはアクロバティックな動きよりも、長台詞など"演技力"が求められる表現が大半でした。そこでフェイシャルチームとしてもブラッシュアップをくり返しました。アクターさんたちに演じていただいたリファレンス動画も重宝しました。例えばリュークがリンゴをかじる演技では、10年前はパクっとひとくちで済ませていたものを、しっかりとほおばる動きを施しました。何かと苦労はしましたが、死神たちのフェイシャル表現を着実に進化させることができたと自負しています」(石山氏)。

キャラクターアニメーションについて。DFでは数年前からアニマティクスで使用するモデルを使い、モーションキャプチャ時にリアルタイムで簡易的なCGアニメーションが確認できるシステムを構築している。上述のとおり、確かな演技力が求められたが、例えばアーマについては女性らしくしたいという監督からのリクエストを受け、特に指先の細かい動きに注意しながらのアニメーションを付けたという。指先が他のキャラに比べ長く、キャプチャを流し込んだだけでは良い感じにはならず、綺麗なシルエットになるように細かく調整がくり返された。そうした努力の好例が、マスカットをしなやかに食するカット(亀川氏自身もお気に入りだとか)。その後に、部屋を出て行く竜崎(池松壮亮)を見送る際の寂しげなアーマの表情も名演である。「アーマはあまり大きな動きがないので、微妙な演技で感情を伝えられるよう注意しました」(亀川氏)。


リュークのフェイシャルリグ。(図中・左)フェイシャル作業用のハードウェア表示/(図中・右)フェイシャルコントローラ


Mayaによるフェイシャルアニメーションのブラッシュアップ例。(図中・左上)Shotカメラ/(図中・右上)パフォーマンスキャプチャにおけるHMDからアクターの表情をとらえた動画とフェイシャルコントローラ/(図中・下)アニメーションカーブ編集画面。リアリティと感情表現を高めるべくブラッシュアップがくり返された


アニメーション作業フローを図示したもの。実写素材/MOCAP収録時の動画。役者の頭の位置を、スタッフの拳で仮配置していることがわかる(実際のリュークの大きさを考慮した高さになっている)。上手・奥のスクリーンには、リアルタイムでアニマティクス用キャラモデルにモーションを流し込んだものが見られるようになっている/アニマティクスのチェックムービー。このカットは実写素材のマスクとCGのマスクの切り替えを行なっているが、違和感が生じないよう動きが調整された/アニメーションのチェックムービー。さらに動きや接地がブラッシュアップされた。「手首の角度や腕を含めた全体的なポーズをブラッシュアップしています。肩の羽やスカート部分は半透明にして身体のライン自体もおかしくないかチェックしてます」(亀川氏)


MOCAPデータをキャラモデルに流し込む「アクターインプット作業」等の効率化のために開発されたインハウスツール「ActorInputManager」UI。最初のシーン構築(MOCAPデータの読み込み・アセットのインポートなど)から管理まで、このツールで行われる


フルCGキャラクターである死神が介在するシーンの撮影例。実写撮影時のアクターの配置に合せて、CGキャラを配置する。図は本文でも触れたアーマと竜崎の会話シーン。「このショットでは目線合せも気を配りつつ、マスカットの受け渡しがポイントです。アーマの指から離れるまではCGで、竜崎の手に完全に渡ると実写素材に切り替わるので、自然な動きに見えるように調整しています」(亀川氏)


MBによる作業例。ショットワーク班に作成してもらったカメラをインポートし、実写素材を貼り付けて作業を進める。「このショットのリュークは、クルマの上に乗っているところからスタートなので、アタリ用のクルマ込みで背景を読み込み、接地を調整しています。リュークの飛行アニメーションは、全体移動用のコントローラを別途用意して制御しました。ポーズと組み合わせつつ、移動と分離しないように調整しています」(亀川氏)


アーマの指やポーズについて、特に女性らしさに注意が払われたショットの例(その出来映えはぜひ劇場で確かめてもらいたい)


序盤の見せ場となる繁華街におけるデスノートによる大量殺人のシーンより。クルマ、轢かれるモブなども3DCGのため、アニメーションが施されている


「オープニングはフルCGですが、土井CGディレクターが作成した仮のMayaシーンをベースにMotionBuilderへコンバートし、それぞれのノートのアニメーション、カメラの調整を行いました。スケマティックで選択中のノードが各ノートの移動調整用コントローラです」(亀川氏)。カメラビューの黄色ラインは、各コントローラの軌道である

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03 エフェクト、ライティング&コンポジット

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