02 Phase 2(再構築) from 2016 January to February
宇宙と地球の自然の中にある"美"を探し求める
「フェーズ2」がスタートしたのは、2016年1月のこと。「フェーズ1」の終盤は落ち込んだという佐藤氏だが、まずは腰を据えてコンセプトワークに集中したそうだ。「今、自分がつくりたいものを考えたときに、大きなものとして『宇宙』がありました。そして、宇宙の表現を考えていくなかで、2014年に発表した『TMoB』で描いた世界観とのつながりを感じ、最終的に"Beauty(美)"をテーマに5つの世界を描いていくという構想にたどり着きました。本作は"宇宙"の美ですが、第3章では"サイバー空間"を、第4章では"和のデザイン"を、そして第5章では表現としても新たなものを描こうと"新世界"をテーマに描いていこうと計画中です」。
時間が前後するが、「フェーズ1」と同時期に「フランクフルト モーターショー(IAA)2015」向け展示映像の制作に携わっていた佐藤氏は、その現地視察の後にドイツ、スイス、そしてアイスランドを旅行したという。そして各地で訪れた大自然から大きなインスピレーションを受けたことが、『Beyond~』の制作を再開するきっかけにもなったそうだ。「特にアイスランドで見たセリャラントスフォスの滝には衝撃を受けました。そのスケールと現実の自然がもつ密度(ハイディテールさ)を『Beyond~』にも反映したいと思いました。なんというか、3DCGなどデジタルによる表現であればこの程度だろうと無意識にわりきってしまっていた自分に対して、『そんなことじゃダメだろ!』と、大自然に渇を入れられた気がしますね」。そして、この思いが実作業のアプローチにも影響を与えた。「今回は3DCGを活用する。それと同時に、実は"使い慣れているParticularはNG"というルールを自分に課していたのですが、作品クオリティを高める上では自分の武器をフル活用するべきだという考えに改めました」。また、情報量を高める手立てとして、自然景観の背景セットを制作する際にはQuixel Megascansの岩オブジェクトを利用したり、C4Dのスカルプト機能で岩肌のディテール等がつくり込まれた。
「大自然から得たインスピレーションとしては、オーロラも大きかったですね。オーロラは太陽風の影響によって生まれる現象ですが、まさに宇宙とのつながりを感じるものだなと」。そうした思いから浮かび上がったイメージを、AEのペイントツールでスタイルフレームに描き込んでいきながら、本制作に向けたアニマティクスの作成も進められていった。なお「フェーズ2」終了の段階で全体としての完成度は70%ほどだったそうだ。
フェーズ2にて作成したストーリーボード。その過程で全5章のシリーズとして制作するという構想も生まれた
フェーズ2の初期に作成したもの
さらに詰めていき、フェーズ2の最終的なアニマティクスに近いかたちへとブラッシュアップしたもの
スタイルフレームを制作する前段階として、ストーリーボードの各コマのスキャン画像に対してAEのペイントツールを使い、映像演出プランやエフェクトの指針を描き込んだもの
同じくクライマックスシーンの検証。どのような印象に見えるのか、事前にしっかりと確認しておくことが重要だという
フェーズ2における最終的なアニマティクス(仮のコンポジション)より
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フェーズ2にて、想像上の宇宙、銀河空間を旅するような物語にしていくことが決定。それに伴いサブタイトルも「Into the Galaxy」に
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宇宙空間を旅していくと、もうひとりの自分(分身のような存在)に遭遇する。最終的にこのシーンがクライマックスとなった(後述)