03 アニメーション&ショットワーク
各モブキャラの細かな動きまで丁寧なブラッシュアップを徹底アニメーション作業は、レイアウトを含めて的場一樹氏が大半を担当。「群衆アニメーションが主体ということもあり、モーションキャプチャ(以下、MOCAP)と手付けの割合はおおよそ9:1。ヒロインと乗り物のアニメーションについては手付け(キーフレーム)で作成していますが、そのほかはキャプチャベースです」(的場氏)。キャプチャ収録はCrankで行われたが、アクターも的場氏自身が務めたという(女性キャラを除く)。「MOCAPデータのブラッシュアップでは、やはり接地の部分の調整にけっこう時間がかかりましたね。また、制作が進む過程でどんどんモブキャラが増えていったので、途中本当に終わるのかな? と少し不安になるときもありました(苦笑)」と的場氏。乗り物の排気ガスのボリュームエフェクトはFumeFXで作成。車体の振動もしっかりと動きが付けられた。1ショットで最大100キャラ(上野駅のシーン)ほどのカットもありPlayblastを書き出すだけでもひと苦労だったという。そういった経緯もあり、本作の画づくりは、コンポジットではなくライティング工程で極力詰めることに注力。CG素材は基本的に一発レンダリング(V-Rayを採用)。コンポジット作業をできるだけシンプルにするのがねらい(=予算内で費用対効果を最大限高めるために)であった。したがい、本作のコンポジット作業はオーソドックスなものにとどまったようだ。なお、CG・VFX作業に用いられたレンダーサーバは6台。最初は1フレーム1時間くらいかかっていたそうだが、高畠氏のアドバイスを参考に素材ごとに細かく設定を見直すことで最終的には15分くらいまで抑えられたとのこと。GIのノイズが出るのでそこの設定でなかなか苦戦したようだ。「MORIE近くのミニチュアショップを訪問して、店員さんに塗料の成分などを聞きリファレンスとしてミニチュアカーを購入。塗料の反射屈折率など、できる限り詰めました。ディスプレイスメント、汚しなども入れて、最終的にはミニチュアガイドとの見た目合わせにはなりましたが、実物に限りなく寄せられたのではないかと思います」と、柴野CGディレクターはふり返る。コンポジット作業後は、十十によるオンライン編集。その際はグレーディング処理も施されたそうだが、とても効果的だったと森江監督。マッチムーブはNHK CG/VFXチームが担当。基本的にはPFTrackを使用。数カットboujou、NUKEも使用して臨機応変に対応したとのこと(基本的には静止画なのでブラーがかかることもなく、取りやすい素材だったという)。
完パケは3月9日。今回モブキャラの数が大量だったので、めり込みのチェック、モーション、アセットの使い回し感を払拭するといったブラッシュアップ作業が時間の許すかぎりくり返された。深夜までの撮影や自発的なリテイクなど、作業負荷は相当なものだったことが窺えるが、制作中は険悪な空気に陥ることはいっさいなかったとか。森江監督の強いこだわり、そして参加スタッフが「良いものをつくろう!」という共通の目標に向かってモチベーションを高く保ち続けた結果、女性層を中心に幅広い視聴者に愛されるタイトルバックが誕生した。
PFTrackによるカメラトラッキング(マッチムーブ)作業の例。トラッキング作業にはNUKEやboujouも併用したという
上京する女の子の手付けアニメーション作業例。女の子をはじめ、MOCAPでは表現しきれない繊細な動きは、手付けで動きが付けられた。MOCAPベースの群衆に比べて不自然でなく、かつミニチュアの世界観を崩さないようなバランスを心がけたという
靴ブラシを稲田に見立てたシーンの撮影時に収集したリファレンスの例
実写撮影用の照明機材の配置を記録した資料
当該ショットのライティング設定。HDRIと実写用の照明のある位置に配置したVRayLightの2灯を使用、レンダリング設定はGIが用いられた。「フリッカーを防ぐためにDMC samplerおよびIrradianceMapの値を高めの設定にしています」(柴野氏)
ブレイクダウン
-
Maya上のプレビュー
-
背景プレート