<2>アニメーション&キャラクターエフェクト
実写とVFXの橋渡しにVRコンテンツを活用
太田VFXスーパーバイザーを筆頭に、30歳前後の若手が中心となった本作のVFXチーム。だからこそ、監督やベテランスタッフ、そして役者たちに目指すビジュアルをできるだけわかりやすく伝えることを心がけたという。コンセプトアートなど、多数の資料を準備し撮影に臨んだが、そうした施策のひとつとしてVRコンテンツも用意された。撮影現場にOculus Goを持参し、鬼の身長3~4.5mというサイズ感を体感できるようにと、背景と鬼を合成したVRコンテンツや静止画をスタッフ・キャストに見てもらい、最終的な仕上がりをイメージしやすくなるように配慮。役者が鬼と絡むシーンでは、プリビズも作成された。
鬼のアニメーション制作では、Cafeグループ(キャラクターアニメーションをStudioNocoとAnimationCafe、リグ&セットアップをModelingCafeが担当)の協力を得た。Mayaで制作したアニメーションデータをAlembic形式でエクスポートし、KhakiチームがCinema 4DにインポートしてRedshiftレンダラで回すというワークフローで制作が進められた。Redshiftによるレンダリング時間は、シーンを投げて読み込むのに平均1時間ほど、レンダリング時間は1カット3~4時間ほどだったという。高負荷のショットは鬼がアップになるショットで、特に重いショットは約2日を費やしたそうだ。また、モーションブラーはコンポジット工程で加える方針だったが、CG要素の動きが速いショットについてはブラー込みでレンダリングすることで対応している(デプス表現はコンポジット工程で追加)。鬼が登場するカットは約50、総尺で約4分とのことだが、リテイクやブラッシュアップを含めてレンダーサーバ(10台で構成)でレンダリングを5~6周回すことになったそうだ。クロスシミュレーションについては、最も大きく揺れる鬼(ボス)は、Khakiの荻谷健太氏がHoudiniのVellumで作成。残りの2体はModelingCafeのアーティストがMayaのnClothで作成している。KhakiにおけるHoudiniワークを一手に引き受けた荻谷氏は次のようにふり返る。「クロスシミュレーションに加えて、アップショットのオブジェクトの差し替え作業も担当しました。鬼の手元をハイメッシュモデルに差し替えたのですが、Houdiniはオブジェクトの差し替えも手早く行えるので限られた期間で仕上げることができました」。Houdiniによるクロスシミュレーションは、サーバ2台を使い、1ショット約2時間。最終的にシミュレーションデータは30TBにも達したという。なお、シミュレーション時にクロスが暴れることもあったそうだが、その場合はVelocity Blendを調整することで対応しているとのこと。
マンティスのリグデータ
▲モデルやボーン、ウェイト情報などを要素ごとに分け、スクリプトによって各要素を組み立て、リグを作成している
Mayaによるマンティスのレイアウトとアニメーション
▲存在感や重量感を念頭に置きながら、演出の意図を最大限に引き出せるよう意識して作業したという
VR画像の作成
今回、キャストが鬼のサイズ感をイメージしやすいよう、VR画像の作成を行なった。現場ではOculus Goを使用して確認してもらったとのこと
▲マンティスに掴まれるシーンのイメージ
トラッキングとマッチムーブ
トラッキングとマッチムーブには、SynthEyesを使用
▲予告編冒頭のドローンカット
▲オブジェクトのトラッキングデータは、SynthEyesからMayaへエクスポート
シミュレーション
▲Houdiniによる鬼の衣装とパイプのシミュレーション。モデルとアニメーションがシミュレーションに適していない状態のものが多く、適宜Houdiniで修正が行われた
筋肉の調整
▲アニメーション作成後、筋肉の動きが想定よりも大きくなりそうなカットや、服や筋肉の動きにエラーが起きている箇所については、Mush3Dでショットスカルプトを行い調整